久遠の絆

◇◇◇





未明。


まだ夜が明け切らない頃。


暁闇の中で、ひとりの男が寝巻きにローブを纏って座っている。


「シドさまがいない?」


内容は面白くないことだろうに、隻眼の男はむしろ楽しそうに問い返した。


しかし彼の前には誰もおらず、部屋を見渡しても他に人影はない。


その見えない相手に向かって、ヘラルドは言葉を紡いでいた。


「小娘め……ついにシドさまをたらしこんだか」


クククと喉で笑うと、見えない相手に視線を向けた。


「これからの余興がますます楽しみになった」


何物かが何かを言い返したのだろう。


ヘラルドは深く頷くと、


「余興は多ければ多いほどいい。それだけ楽しみも続くというものだ」


そこでヘラルドは立ち上がり、今まで話し掛けていた方とは逆を向いた。


長いローブをはらりと払うと、


「やれ」


と短く命じた。


見えない相手がいつ部屋を出たのかは、ヘラルドのみが知っている。