久遠の絆

シドはまた蘭を抱き上げたのだ。


今度は完全に意識のある蘭は、お姫様抱っこをされて顔を赤らめつつ、「下ろして」とシドの肩を押している。


「下ろさないよ。こうでもしなきゃ、動こうとしないだろ」


「い、いい!自分で行くから、下ろしてよ」


「せっかくだからこのまま連れてってやるよ」


そのままシドは階段へと向かう。


(ええっ、シドが!漆黒の総帥がっ!わたしをお姫様抱っこしてるぅ)


こんな姿、絶対ヘラルドには見せられない。


(今だけ、今だけ……)


落ち着かなくて、早く階下に着くことばかりを考えていた。


トントントンと軽やかに階段を下りていくシド。


(なんだか……お兄ちゃんて、こんな感じなのかな……)


などと考えては気を紛らわせていると、やっと食卓に辿り着いた。


いや。


実際はあっという間だった。


何しろ小さな小屋だ。


二階から一階までなんて、たかが知れている。


けれど緊張していた蘭には、とても長い時間に思われたのだった。


シドは壊れ物でも扱うように丁寧に蘭を下ろすと、「急に食べても良くないから、スープだけにしとくか」と言いながら台所へと入って行った。


蘭はこのところシドの意外な姿ばかり見ている気がした。


いや、これも本来のシドであるというのなら、表と裏では本当に印象の違う人だと思う。


けれどそれも仕方のないことだ。


彼は一般人ではないのだから。


一国を背負う立場の人であるなら、表で見せる顔と裏の顔とが違うのも当然だった。


(それはカイルみ同じで……)


そう思った途端、胸に鈍い痛みが走った。


ただカイルのことを考えただけで。


(重傷だ)