久遠の絆

なにしろ彼は、帝国を飛び出してからこのガルーダの地を得るまで、長い野営生活などを経験しているのだから簡単な男の料理ならできるのだ。


生地を寝かして発酵させている間に、今度は鍋を出してかまどにかけた。


人参やジャガイモ、玉ねぎなどを手早く切って、鍋に放り込む。


「まあ、スープはこんなもんか」


簡単な味付けであとは煮込むだけにすると、生地の仕上げに取り掛かった。


薄く伸ばして、その上にトマトソースや干し肉を切ったもの、バジル、チーズをのせ、石窯に入れた。


「うまく焼けてくれよ」


それぞれの料理が出来上がるのを待っている間は、ミルを取り出し、コーヒー豆をひき始めた。


存外こまめな性分らしい。


コーヒーのいい香りがキッチンに漂う中で、石窯からも香ばしい香りがし始めた。


焼きあがりは上出来だった。


チーズの程よい焦げ目が食欲をそそる。


シドは満足そうに頷くと、テーブルをセットしてから階段を上って行った。







部屋に戻ると、まだ蘭はうつらうつらしていたみたいだった。


「蘭」


声を落として呼ぶと、うっすらと目を開けた。


「シド……?」


「ああ。晩御飯できたけど、食べられるか?こっちに持って来た方がいいか?」


蘭は首を横に振った。


「何も欲しくない」


「だめだ。ずっと食べてないんだろ?スープだけでも飲まなきゃだめだ」


「欲しくないもん」


駄々っ子のように嫌々をする蘭に、シドは溜め息混じりに「仕方ないな」と呟いた。


「シ、シド!?」


一気に眠気が覚めたように蘭が声を上げた。