久遠の絆

シドは騒ぎを聞き付けて隣室から入って来たリリカに、蘭を着替えさせるように命じた。


リリカは、仕える蘭の様子に驚いたようだったが、すぐに黙々と命じられたままに動いた。


感情は差し挟まない。


それが彼女の役目だからだ。


しかしされるがままの蘭はまるで人形のようで、それには終始眉をひそめていたけれど。





シドは着替えの間部屋を出ていた。


その間も、見えない“犯人”に対する怒りがフツフツと沸いて来ている。


忽然と消えた相手。


どういうことなのか分からないが、蘭を傷付けたということは明らかで、彼女の心にある深い傷を知る身としては許せなかった。


もしまた彼女が自分で自分を傷付ける行為をし始めたら?


そう考えると居ても立ってもいられなくなる。


(今度は俺が彼女を救うんだ)


蘭という、まだ少女の域を脱しない娘と接して自分が救われたように。


彼女の危機には自分が助けとなりたい。


そう思った。


「シドさま」


扉が静かに開けられ、リリカが顔を出した。


「ランさまのお支度が済みました」


「ご苦労」


いまだシドの瞳には怒りのために鋭い光が残り、その漆黒に見据えられ、リリカは無意識に身を竦ませた。


それに構わずシドは足早に部屋に戻ると 、淡い色の服を着せられた蘭の傍に立った。


彼女はまだ虚ろなままだ。


その様子にキュッと口元を引き結ぶとシドは、彼女に掛けてあった毛布を持ち、それでくるくると蘭を包んだ。


「シ、シドさま?」


背後でリリカの慌てた声がした。


しかしシドは己の行為のみに集中している。


そして毛布に包まれた蘭を、横抱きに抱き上げたのだ。


それからシドは初めてリリカをまともに見た。


この時ばかりは驚きを隠せないリリカに、


「しばらく預かる」


と短く告げた。