久遠の絆

◇◇◇




調印式に向かう途中、シドの心は複雑な思いで満たされていた。


総帥としての自分と、一人の男としての自分と。


そのせめぎあいの中で、精神のバランスが時におかしくなっているのを感じることがある。


今もそうだった。


カイルに会えると嬉しそうにする蘭に嫉妬する自分がいた。


けれどそれとは別に、彼女を政治の道具として利用しようとしている自分も同時に存在している。


以前は後者の方ばかりだったけれど。


今は。


彼女を一人の男として見つめる自分を自覚しているから、複雑だった。


このまま蘭をカイルに会わせ、彼女がもしダンドラークに帰る気になったとしたら。


素直に許せるとは思えなかった。


当然帰す気などさらさらない。


瑠璃の巫女として、彼女にはまだまだこのガルーダにいてもらわなくてはならないからだ。


それは政治の話。


でも、人の心までは支配することはできない。


彼女がダンドラークに帰りたいという思いを募らせ、また、心に深い傷を負ってしまったら?


また自傷を繰り返すようになったら?


(そうすれば、俺は自分を許せなくなるだろうな……)


自分を拉致し、幽閉状態に置いた男に、友達になろうとまで言ってくれた彼女を。


(俺はまた傷つけようとしている)


だが。


ダンドラークを完全に支配するためには、彼女を返すことはけしてできないのだ。


停戦でさえ、ぎりぎりの選択だったのだ。


瑠璃の巫女を渡すことは何があっても許すことはできない。