久遠の絆

それを知ってか知らずか、蘭は呑気に食事を続けている。


遅れていたペースも取り戻し、ようやく皿の上のものがなくなって来た時、それまで黙々と食べ続けていた蘭が顔を上げた。


シドは思案顔で、食後のお茶をすすっていた。


「ねえ、シド」


それまで何となく話すのをためらっていた蘭は、ここでやっと意を決した。


それは。


「カイルのことなんだけど」


だった。


シドはカップから口を離すと、「なんだ?」と明らかにこの話題を歓迎していないような声音で答えた。


蘭は(やっぱり話さない方が良かったのかな)と思いながらも、今更話題を引っ込めるわけにもいかず疑問に思っていたことを訊いた。


「今日、カイルが来るって、最初から分かってたの?どうしてわたしも同席させてくれたの?」


そう訊かれたシドは、もう一度カップに口を戻し、口を開こうとしない。


拒絶?


それとも言葉を探している?


蘭はシドが答えてくれるのをじっと待っていた。


しばらくしてシドはカップを置くと、漆黒の瞳を蘭に向けた。


「……ダンドラークに戻りたいと、思うか?」


それは思ってもみないことだった。


もちろん望んでいる。


でも今この時にシドがその話を持ち出すとは思いもしなかった。


蘭は驚いて口を開けたまま固まってしまった。


「伝説の巫女姫とダンドラークに戻りたいというのが、お前の望みだったはずだ」


「それは……そうだけど……」


シドの真意はどこにあるのか。


蘭には分からなかった。


「戻りたいと言えば、帰らせてくれるの?」