久遠の絆

「……補償については、いずれご再考頂けることを期待している。まずは協定を結ぶことが先決だ」


熟考したのち、重々しいカイルの声が響いた。


結局それ以外に選択肢はなかった。


それは先刻承知の上だったが、それでも失われた命のことを思うと、この場に持ち出さねば申し訳が立たない。


彼は軍の頂点に立つ者としてはいささか優し過ぎるのだ。


カイルの言葉と同時に、


「ではこちらの条件を提示する」


そう言って、シドが一冊のファイルをカイルの方へと投げた。


それをゆっくりとした動作で開き、ざっと目を通したカイルの顔は見る見るうちに強張っていった。


「これは……」


かすれたような声を発して絶句するカイルに、シドは意地悪とも取れる笑みを浮かべて、


「そちら側にとっても最良の条件だと思うが?」


カイルは気持ちを落ち着けるように瞼を閉じ、ひとつ深呼吸すると、その美貌を少しばかり青ざめさせながら、


「これでは帝国は無きに等しいものとなってしまうと思われるが……?」


確認するようにシドに問うた。


帝国を倒す。


それが同盟の目的であると分かってはいる。


だが。


この条件はあまりに一方的過ぎた。


そんな相手を嘲笑うように口を歪めたシドは、


「皇帝の退位と同盟への従属。大まかに言えば条件はそれだけだ。どこにも帝国がなくなるとは書いてないと思うが?」


確かに大まかな要求はそれだった。


だが他の細かい条件を読んでみれば、それが帝国の権力・領地などあらゆるものをそぎ落とすものであることが読み取れる。


「帝国は同盟の一部となり、理想の国を作るための歯車となる。名誉なことだと思いこそすれ、何が不満だ?」


シドの声が高らかに響いた。