久遠の絆

白亜の官邸に車列は吸い込まれていった。


ところどころに雪の山が残されている。


(ここには雪が降るのだな……)


さまざまな自然環境が点在する帝国では、首都の辺りは一年を通して温暖な気候で雪は降らない。


カイルには珍しい光景だった。


「さ、元帥どの、こちらです」


先に車を降りたヘラルドが促した。


カイルが車から出ると、出迎えの女性たちから一斉にため息が漏れた。


(これが噂の美貌の元帥か)と言ったところだろうか。


カイルはその女性たちに優雅に会釈すると、ヘラルドに先導され歩き始めた。


一度建物の中に入ったものの、すぐに中庭へと通じる通路に出て、そのまま中庭を突っ切った。


そこには車寄せよりもまだたくさんの雪が残っており、ひんやりとした冷気も漂っている。


「お寒くありませんか?」


それを察したのか、ヘラルドが珍しい気遣いを見せたが、カイルは小さく首を振っただけで、むしろその景色を楽しんでいる様子さえあった。


(蘭さまもこのような景色に、少しは慰められておられるだろうか)


思いはすぐに、かの少女へと至ってしまう。


これから大事な会議に挑むというのに。


しかし彼女を守り抜くことは、彼が自らに課した使命ではなかったか。


自分の運命に抗うことなく、すべてを受け入れ、旅立ってしまった勇気ある少女。


強い、と思う。


その心の中に深い傷を抱きながら、それを隠し続けている。


それを見せてくれとは言わない。


けれど。


その傷ごと、自分が彼女を包んでやれるなら。


その強さごと、自分に身を預けてくれるなら。


(私は喜んでこの胸を差し出そう……)