久遠の絆

ヘラルドは張り付いたような笑顔のまま、至極丁寧な態度で「さあ、こちらに」とカイルを促した。


慇懃に過ぎれば、かえって腹が立つものだ。


それがこのヘラルドならなおのこと。


(腹の底が読めない男)

という印象が拭えない。


初めて対面するが、すでにカイルは警戒心を持ってこの男に対していた。


「総帥は官邸にて、元帥どのをお待ちです」


軽く頷いて、黒塗りの高級車に乗り込むと、続いてSPとして付いて来た将校も乗り込もうとした。


しかしヘラルドは「いえ、近習の方は後ろの車へ」と言ってそれを遮ると、自らがカイルの隣に乗り込んだのだ。


慌てたのは将校だった。


「しかし、閣下をおひとりにするわけには」


非難の声を上げる将校に、ヘラルドはさらに口元を歪めて見せると、

「おや、この友好的な日に何かあると、あなたは仰るのですか?」

といかにも小馬鹿にしたふうに言ったのだ。


うっと言葉を詰まらせる将校に、カイルは安心させるように微笑むと、「参謀どののご指示通りにしなさい」と静かに告げた。


ヘラルドが同乗していて何かがあれば、おそらくはヘラルド自身の身が危うくなるだろう。


そのような危険を、この狡猾な男が犯すとは思えない。


カイルにはそのような読みがあったのだ。


「は、それでは」


しぶしぶ将校は後ろの車へ向かった。


それを見送ると、ヘラルドはすっと顔をの歪みを元に戻し、いつもの無表情となって背もたれに深々と腰を掛けた。


車が走り出すと、それまでの友好的な姿勢はどこかに行ってしまったらしい。


ふてぶてしさを露わにし、帝国元帥がどれほどのものと言わんばかりの態度だった。


だがカイルも割合に豪胆のようだ。


そのようなヘラルドの態度をさして気にした様子もなく、こちらもゆったりと腰かけ、余裕綽々という感じだ。