久遠の絆

つかつかと蘭の目の前まで歩いてくると、ヘラルドはいきなり蘭の襟首を掴み上げた。


「ん……」


苦しさに顔を歪めた蘭を見て、ヘラルドはにんまりと笑った。


「やめろ、ヘラルド」


冷静さを失わない声で、シドがヘラルドの肩を掴んだ。


「彼女に酷いことをすれば、俺が許さない」


「これはまた……」


ヘラルドは襟首を締め上げる手を緩めることなく、シドへと意識を向けた。


「随分と瑠璃の巫女に入れ揚げておられるようですね」


苦笑とも失笑とも取れないものを漏らして呆れたように言う腹心の部下を、シドは頭一つ高い位置から見下ろしながら、

「どういうことだ?」

と訊いた。


「関心をお示しにならなかった小娘に、今更なぜ肩入れなさるのです?」


「やっ……」


ヘラルドの手に力が加わり、蘭は呼吸ができなくなった。


「ヘラルド」


同時に、側近の肩を掴むシドの手にも力が入る。


「それ以上は許さんぞ、ヘラルド」


威厳ある声にヘラルドはひとつ溜息をついて、ようやく少しだけ力を抜いた。


途端に咳込む蘭。


けれどヘラルドは離そうとしない。


「この小娘は世界を手に入れるための道具でしかなかったはず。何があったのです、シドさま?」


自分を見つめたままの、ヘラルドの眼帯をしていない方の眼に憎しみの色が溢れているのを、蘭はがたがたと震えながら見返すことしかできなかった。


「彼女が俺に光を灯してくれた」


シドのその言葉に、その眼が驚愕に見開かれた。


「な……に……?」


いつも沈着としているヘラルドがこんなにも動揺を露わにするとは。


蘭は薄れゆく意識の中でなんだか可笑しくなっていた。