久遠の絆

入るとそこは狭い部屋で、女性が机に座っているだけだった。


「総帥は執務室でお待ちです。こちらへ」


そう言って女性はこちらに出てくると、奥にあるこれまた重厚な扉へと歩いていく。


この人はいわゆる秘書というものなのだろう。


スーと扉が開くと、そこは数倍の広さがある部屋だった。


「うっわ……」


その部屋は建物から突き出した造りになっているのか、壁三面が大きな窓になっていて、冬の淡い陽光が差し込んでいる。


電気がなくても十分に明るい部屋だった。


「総帥、お連れしました」


その窓の前に、部屋にふさわしく見たこともないくらい大きな机があり、シド・フォーンはそこで何か仕事をしている。


秘書の声に、シドは顔を俯けたまま。


それはいつものことなのか、彼女はたいして気にした様子もなく一礼して出て行った。


(え、わたし、どうしたいいんだろ……)


入ったままの場所で立ちすくむ蘭に、シドは気付いているのかいないのか、一向に顔を上げようとしない。


「あのう」


それでも仕事の邪魔になってはと控えめに声をかけると、「ちょっと待て」と低い声が返って来た。


どうやら蘭の存在は覚えているらしい。


蘭はほっとして、部屋をぐるりと見渡した。


大きな窓以外は、飾りひとつない殺風景な部屋。


まさに仕事をするためだけの部屋、と言った感じだ。


唯一の慰めは窓からの眺めだろうか。


ガルーダの美しい街並みから、青い海まで見える。


(こういう景色があるから、飾りもいらないのかも)


一つの窓辺に立って、そう思った。