久遠の絆

「俺に……兄がいるの?」


「え、ええ、そうなんですけど……。でも知らないんですよね」


「うーん、そうだね。そもそも俺はいつもひとりだから」


「そんなことないです!」


蘭の突然大声に、シドは驚いたようだった。


「ど、どうしたの?」


「シドさんはひとりじゃないです。カイゼライトさんはすっごくシドさんのこと心配してるし、わたしだって、わたしだって、もっとシドさんと仲良くなりたいって思ってるんです。だから、絶対ひとりだなんて思わないでください!」


「……君は、いい子なんだね」


くすりと柔らかに微笑むシド。


(そう言うことじゃあなくって)


いまいち話のかみわない、入れ替わっている方のシドに、蘭はこれ以上何を言っても無駄なんじゃないかと思った。


(でも、もう少しで人格が代わる時間だよね)


それからが本当の勝負だと思い直す。


朝食が終わり、蘭は片付けをかって出た。


台所で洗い物をしている間、シドは何やら鼻歌を歌っていた。


(どっかで聞いた曲)


そう思いながら聴いていると、(あ、カイゼライトさんのヴァイオリンだ)と思い出した。


もしかしたら兄弟が昔仲の良かった頃、共に奏でた曲なのかもしれない。


(やっぱり、シドだって、本当に忘れているわけじゃないんだよ)


ならば、望みがないわけではない。


ここで挫けてはいけないんだ。


最後の皿を食器棚に戻した時、鼻歌も止んだ。


(よし、第二ラウンド)


洗い物を終え、手を拭き拭き居間に戻ると、シドが頭を抱えてソファに座りこんでいた。


「シドさん?!どうしたんです」


慌てて駆け寄ると、顔を上げたシドの眼は鋭く光っていた。