久遠の絆

遠慮がちに扉をノックすると、しばらくしてその扉が静かに開けられた。


漆黒の瞳とばっちり視線が合ってしまい、蘭の心臓がどきりとなった。


「あ、あの、おはようございます」


「やあ、君は!」


シドは喜びの声を上げた。


「また君に会いたいと思っていたんだ。さあ、入って」


彼は蘭の手を掴んで中へと引き入れた。


(そっか、まだ、別の人格のシドなんだ)


蘭に「側にいて」と言って寂しそうな顔をしていた人。


シド・フォーンとは全く逆の性格の人。


それもシドであるのに、とても同じ人物だとは思えない。


「ちょうど良かった。これから朝食にしようと思っていたところなんだよ。一緒にどうぞ」


先程おなかいっぱい食べてきていたけど、そう言われたら席に着くしかなかった。


「コーヒーでいいかい?」


「あ、はい」


カイゼライトさんは紅茶だったけど、シドはコーヒーなんだ。


そんな他愛のないことで、つい兄弟を比較してしまう。


テーブルにはスクランブルエッグやサラダ、焼き立てパンなど、美味しそうな朝食が並んでいた。


「これ、シドさんが?」


「そう。料理は最近覚えたばかりだけどね」


それでも自分よりはよっぽど上手だと、蘭は内心がっくりした。


(わたし、料理すら、まともにできないんだよね……)


味も申し分なかった。


焼き立てパンは、ふんわりもちもちで最高。


当然シドが種から作ったものだろう。


(シドに料理習おっかな)なんて考えもよぎったりした。