久遠の絆

思いもしなかった彼の過去。


そして現在抱える病。


彼はそれらを少しも感じさせることなく、ガルーダの総帥であり続けている。


人格が変わっている時は記憶をなくしているとは言え。


けれど記憶がない時間があると言うのは、どんな気持ちなのだろう。


蘭には想像も出来なかったけれど、それでも不安に思うだけでは済まないだろうと思う。



そもそも自分に彼を救うことなんてできるのか。


一国を背負う、大人である彼を、自分なんかが救おうなんておこがましいんじゃないか。


けれどそう思えば思うほど、カイゼライトの辛そうな顔が目の前にちらついて、やっぱり何とかしないとという気持ちが戻ってくるのだった。


(大人のあの人を、子供のわたしが救おうなんて思わなくていい。ただ、傷付いた彼の心に寄り添ってあげれれば……)


そうすれば少しは良い方向に行くかもしれない。


辛ければ辛いと言っていいのだ。


(シドと友達になれたらいいな)


蘭はそう思った時、(そうなんだ)と自分の中でひとつの光明を見出したような気になった。


救おうなんて思わなくていい。


彼のことを真剣に考えてあげられる友達になろう。


それくらいなら、自分にもできそうな気がした。


けれどどうやってシドに近付くか、それが一番の問題なわけで。


「きっとカイゼライトさんが機会を窺ってくれるよね」


なんだか疲れていた。


蘭はベッドサイドの明かりを落とすと、そのまま深い眠りへと落ちていったのだった。


彼女の中で、何かが変わろうとしていることには気付かずに……。