久遠の絆

シドは言った。


「俺は父上の側妾の子で、いつも一歩引いた立場にあった。だが兄上を補佐し、この家の発展の一翼を担えればそれでいいと思っていた。それが自分の運命なのだと受け入れていたのだ。あの時までは……」


「あの時?」


「母は……側仕えの侍女にまで、あばずれ、泥棒猫と陰口をたたかれ、自傷行為を繰り返し、挙句の果てに自殺した」


「!! お前……どうしてそれを……」


「父上もあなたたちも俺に隠し通しているつもりだっただろうが、だが俺は知っている。母が受けた苦しみも蔑みも、辱めも、すべてだ」


血を吐くようなシドの告白に、カイゼライトは知らず体を震わせていた。


シドの母に辛苦を舐めさせ死に追いやった首謀者は、紛れもなく自分の母親だった。


彼女は、聡明で美しいシドの母にいつも嫉妬していた。


その陰口をまだ年端のいかぬ自分に語っていたのだ。


まだ幼いから何も分からないだろうと思って。


けれどカイゼライトは貴族の子息であるだけに早熟だった。


聡明な彼は、母親の黒い告白をすべて理解していたのだ。


シドの母に行われているいじめも含めて。


(だけど僕は……卑怯者なんだ)


知っていて、傍観していた。


すべては自分に関係のないことだと、煩わしいごたごたで自分の日常を壊されるのは嫌だと。


ただ一人の弟であるシドのことすら省みてやることもなかったのだ。


「母は失望の中で死んでしまった。父上も、無理矢理母を側妾にしたにもかかわらず、一番肝心な時にはほったらかしだ。つまり、あの家に俺たちの味方はいなかったんだ」


項垂れるカイゼライトは、知ってしまった。


もうどう説得しようと、弟が帰国する望みはないのだと。


彼の自分たちに対する怒りは深い。


「無論、国を捨てたのはそれだけではないがな。帝国に疑問を感じていたのはそのことよりも以前からだったし。」


母のことは決断するきっかけだったーーー。