久遠の絆

カチャリとカップの置かれる音がして、蘭ははっとして視線を戻した。


不躾にも部屋を見渡していたことが、今更ながら恥ずかしくなってくる。


しかし彼は気にした様子もなく、蘭を見てにっこり笑った。


「明るいところで会うのは初めてだね」


そう言えばそうだ。


けれどシドと似ている容姿のせいか、そんな感じがあまりしない。


「君が東屋に来なくなって、さらに東屋が取り壊された時には、やはり君と会うべきではなかったと後悔したよ。僕に会ったから、君が辛い思いをしてしまったんだ」


「そんな!わたしはあなたと会えて良かったです。あなたのヴァイオリンを聞かせてもらってる間だけが、わたしの癒しだったんですから」


「ありがとう」


彼は本当に嬉しそうに笑った。


その笑顔につられ、蘭も笑った。


(ああ、やっぱりこの人、好きだな)


こんなにいい人なのに、どうしていらない人間なのか。


そのことばかりが頭に浮かぶ。


彼はしばらく紅茶を飲むことに集中しているようだった。


しかしそれは見せかけだけで、何から話そうかと逡巡していたのかもしれない。


そしてカップを置いた。


膝の上で両の手を組み合わせ、少し前かがみになって蘭を見た。


「聞いてくれるかい?」


蘭は途端に緊張するのを感じた。


「は、はい」


「何から話せば君に分かってもらえるだろうか……。シドを救えるのは君しかいない。僕はそう思うんだよ」


「シドを救う?」


「そう。異界から来た君にしか、彼を救うことはできない。この世界の者とは違う視点を持った君にしか出来ないと思うんだ」


「どうしてわたしが異界から来たって知ってるんですかっ!?」


「……僕は……シドの兄。元は帝国の中枢にいた人間なんだ」