(え……?)
そこは何もない、更地になっていた。
(なんで……?)
そう思いながらも、蘭はその理由を知っているような気がしていた。
(きっとわたしがここに来ていたせいだ。だから、ヘラルドさんが東屋を壊したんだ)
ヘラルドなら、ためらうことなくやってしまうだろう。
(あの人は、あいつみたいだ)
自分が気に入らなければ、相手の気持ちなどおかまいなしに踏みにじる。
そんなところが虐待を続けた父親と重なった。
「このくらいのことも許してはくれないの?」
「もちろんです」
独り言のつもりで呟いたことに返事が返ってきて、蘭は焦って振り向いた。
そこには、ヘラルドとリリカが立っていた。
「あ……」
怖くなって、一歩あとずさった。
「あなたはどうも、ご自分が虜囚の身であることをお忘れらしい。あなたには自由などないのだ。部屋で大人しくしていることだ。それともいっそ牢獄に入れてやろうか?」
冷たく言い放たれる高圧的な言葉に、蘭の体はがくがくと震え始めた。
リリカは俯いてしまっていて、表情を読み取ることが出来ない。
「リリカ」
冷たい声そのままに、ヘラルドはリリカを呼んだ。
「は、はい」
彼女もまたヘラルドを怖れているのか、その表情は強張っていた。
「すぐにランさまを部屋にお連れしろ。二度とこのようなことがないように、すべての
ドアと窓を施錠するんだ。いいな」
「は、はい」
否やの余地はない。
ただその命令に従うだけだ。


