久遠の絆

◇◇◇


広い広い草原。


青く涼やかな草が一面に生えている。


そこに蘭はひとり、草原を吹き過ぎる風に髪を遊ばせながら佇んでいた。


ここには争いごとも、人々の思惑が入り混じることもない。


あるのはただ美しい自然だけだった。


疲れ切った心も体も癒されていく。


(どうしてわたし、ここにいるのかな)


そう思うと、背後に人の気配を感じた。


振り向くと、風にマントをはためかせながら、黄金の髪をした青年がこちらに向かって歩いて来ている。



「カイル……」



ドキドキした。


いる筈のない人がそこにいたのだから。


草原の色と同じ、薄緑色の瞳を真っ直ぐ蘭に向け、彼はいつものように穏やかに微笑んでいる。


「カイル……」


蘭まであと数歩という所で彼は立ち止まった。


しばらくふたりは見つめ合う。


その間も間断なく風が吹いていた。



「カイル、あの、婚約したって聞いたけど……」



話したいことはもっと他にいっぱいあった筈なのに、口から出たのは今もっとも触れたくないことだった。


(しまった)と内心思ったが、もう遅い。


彼がどんな返事を返すのかと俯いて待っていると、ふわりと体が温かいものに包まれた。


(え?)


顔を上げると、すぐ目の横に黄金の髪があった。


鼻をくすぐるいい香りがする。