久遠の絆

「お迎えに上がりました」


戸口に立った側近を漆黒の瞳が見返した。


「遅いぞ、ヘラルド」


「は、申し訳ありません。少しトラブルがございまして……」


「トラブル?」


「お気になさらず。すでに収まっております」


トラブルと聞いても、シドはさして気にしてはいないらしい。


それが側近に対する信頼の強さということか。


彼に任せておけば何も心配いらないという信頼。


上着を優雅な所作で纏いながら、颯爽とした足取りで戸口に向かった。


シドが庭の中ほどに差し掛かった所で、


「今朝、どなたかこちらにいらっしゃいましたか?」

とヘラルドが問うた。


「今朝?」


なんでそんなことを聞くのかという顔をしながら、シドはまだ戸口に立っている側近を見返している。


ややして「いいや。ここのことはお前しか知らないだろう?」と不思議そうに言った。


ヘラルドは微笑んだ。


「はい、その通りです。さあ、参りましょう。今日も忙しくなりますからね」


シドを追い越し先になって歩いて行くヘラルドを見て、シドは小さく小首を傾げ、


「何があったんだ?」

と呟いた。


けれどそれもほんの一瞬のこと。


シドは切り替えるように足を早め、本館へと戻って行った。