久遠の絆

ではシド・フォーンがヴァイオリンの人だったというのだろうか。


しかし、それは違う、と蘭の頭のどこかで声がする。

今のシド・フォーンは冷徹と評されるのが考えられないくらい雰囲気が変わっているけれど、でも、それでも、ヴァイオリンの人が醸し出す、あの独特の雰囲気とは明らかに違っていた。


ぐるぐると疑問ばかりが回っている蘭を余所に、シド・フォーンはただにこやかに微笑んでいた。






「あの、何か違いませんか?」


恐る恐る尋ねてみたが、シドは蘭の言った意味が分からないようで、きょとんと小首を傾げている。


それどころか、さらに親しげな笑みを浮かべ、

「これから朝食なんだ。一緒にいかが?」

などとのたまった。


蘭の背筋がぞぞっと寒くなった。


いったいこれは、何のための演技なんだ?


いや、そもそも、こんな演技をして、何の益があるというのか。


(シドさん……?)


冷酷無比と恐れられ、誰もがその人の前に立つと萎縮してしまうというのに。


(ほんとに、シド・フォーンなの?)


これが誰なのか、もはや蘭には分からなくなっていた。