久遠の絆

一歩でも、半歩ずつだっていい。



「わたしは、前に進まなきゃ」



ゆっくりと立ち上がると、蘭は老女の枕元へと近づいて行った。


老女の冷や汗の浮かんだ青白い顔を見て少し眉間に皺を寄せたが、その苦しむ老女を労わるように額に掛かった髪を撫で付けてやると、


「ナイルターシャさま。すぐに助けてあげますね」


静かにそう言うと、くるりと踵を返して、あの地下トンネルへと続く扉へと近寄って行った。


ヘラルドが退室する際言い置いて行った言葉。


『扉はすべて施錠し、見張りを立たせておけ』


呆然とした中で辛うじて聞いていた言葉を思い出す。


この向こうには誰かがいるはずだ。


扉の前に立つと深呼吸した。



そして。



「すいません!おばあさんの様子がっ!開けてください!お医者を呼ばなきゃ!」


扉はすぐに開かれた。


険しい表情を浮かべた警備兵の顔をちらりと見た。


それもほんの一瞬。


蘭はありったけの力で兵士を押しのけると、地下トンネルへと続く階段へと走った。


兵士の怒号が追いかけてくる。


きっと足では敵わない。


でも走るしかない。


そう思った途端、床が濡れていたのか蘭は足を滑らせ、そのまま階段を転げ落ちて行った。