久遠の絆

隠し扉だった。


こんな小屋に、何のために隠し扉があるのか。


「さあ、蘭さま」


ヘラルドはにこりともせず、その扉に入るように促したが、蘭はここから逃げ出したくなって少し後ずさった。


ヘラルドの意図がまったく見えないから、怖い。


けれど逃げることは出来なかった。


ヘラルドの冷ややかな視線が体を縛るように絡み付いて、それ以上後退することが出来なくなってしまったのだ。


「さあ」


彼がもう一度強く言うと、蘭は逆らうことを諦めたようにのろのろと隠し扉に近付いて行った。


ヘラルドが開けた扉の向こうは、夜よりもまだ濃い闇があった。


するとヘラルドはいつの間に持って来たのか、窓辺にあったランプを手にしてその闇を照らした。


そこにあったのは、下へと下りる階段だった。


狭く急な階段を下りて行った。


かび臭い臭いがつんと鼻について、蘭は緊張とも合わさって気分が悪くなってきた。


顔色が悪くなっているのが自分でも分かる。


しかしそれを気遣ってくれるようなヘラルドではない。


(気遣って欲しいとも思わないけど……)


よろけながら彼の後に付いて行っていると、それほど経たない間に一番下まで下りたようだった。


しかしそこで終わりではなかった。


ランプの明かりは階段の先に真っ直ぐに伸びる地下道を照らし出していた。


(まだ続くの?)


地面の下の奥深く、空気はひんやりとしている。


パーティのために肌の露出した薄い衣を着ていた蘭は、その冷たさにぶるっと身を震わせた。


その地下道は時折分岐していた。


ヘラルドは迷うことなく無言で先へと進んで行く。