久遠の絆

ようやく建物の外観が見えて来た。


夜闇の中に浮かぶ上がるのは、平屋建てで思ったよりも小さい建物だった。


その窓のひとつから明かりが漏れている。


戸口の前に立って初めて、ヘラルドが蘭を見た。


そして扉を開けると、中へ入るように促した。


表情ひとつ変えるでもない彼の顔が闇の中に浮かび上がるように見え、蘭はこくりと喉を鳴らした。


(ここに何があるの?)


恐る恐る扉に近づき、顔だけ中へ入れると左右を見渡してみた。


窓辺にランプがひとつ。


小道から見えていた明かりはこれだったのだ。


そこは思ったよりも普通の部屋だった。


机や椅子といった必要最低限の調度があるだけのさっぱりとした部屋。


生活感がなかった。


「ここは……?」


どうしていいか分からず立ちすくむ蘭の脇をヘラルドが歩いて行き、部屋にひとつだけある棚の前に立った。


その棚には書物が隙間なく置かれていた。


(まさか、わたしがあんまり暇そうだから、この本を全部読破しろとか言うんじゃ……)


本はけっして嫌いではないが、本の虫というほどでもない。


とくに難しい本を読んでいると眠たくなってしまう。


その棚に並んでいる本は、どれも分厚く、難しそうだった。


(1冊読むのに、1ヶ月くらい掛かりそう)


次にヘラルドが何を言うかと冷や冷やしていると、彼は無言のまま本棚へと手を伸ばし、それをそのまま右の方へ押したのだ。


本棚はたやすく右へと動いた。


(え、こんな夜更けに模様替え?)


そんなまさかと思いつつ彼の行動を見守っていると、棚が移動したあとの壁に扉があるのが目に付いた。