久遠の絆

彼には得体の知れない怖さを感じる。


それはシドに感じる怖さとはまた別のものだった。


背中を睨むだけで精一杯。


逆らえばどうなるか……。


広間の方からはまだ喧騒が聞こえてくる。


まだまだ宴もたけなわらしい。


(だからと言って、戻りたくもないけど)


あのおじさん達の相手をするのも、ヘラルドと二人きりでいるのも、どちらも好ましく
はない。


(隙を見て、部屋までダッシュしようか……)


などという考えが一瞬頭に浮かんだが、そんなことしても意味はないと諦める。


やがて小道は木がうっそうと茂る林のようなところに入って行った。


月の光さえ遮られ、足元の見えにくい小道をなんとか進んで行くと、前方に小さな明か
りが見えてきた。


(この庭、どれだけ広いんだろう)


後ろを振り返ると、もう白亜の建物は見えなくなっていた。


それに反して前方に見えていた明かりは、そこに近付くにつれ明るさを増していく。


(あんなとこにも、建物があったんだ……)


屋敷の敷地の中で、かなり奥まった場所だった。


(あそこに何があるんだろう)


期待よりは不安の方が大きかった。


ヘラルドに連れて行かれる場所だ。


決して蘭にとって良いものがあるとは思えなかった。


(わたしもあの人と一緒に逃げとけばよかった……)


ヘラルドの影を見て逃げ出したヴァイオリンの人。


彼には彼の事情があるのだろうから、蘭を置いていってしまったことを酷いとは思わない。


けれど、どうせなら一緒に連れて行って欲しかった。


(済んでしまったことを行っても仕方ないけど)


それでも思わずにはいられなかった。