久遠の絆

彼らの意図するところなど、考えても何ひとつ分からない。


蘭は困惑するばかりだった。


ヘラルドは呆れたように大きな溜息をついた。


(分かんないものは分かんないんだもん。そんなため息つかなくてもいいじゃない。傷付くよ)


蘭は政治家ではないのだ。


ただの女子高生に過ぎない。


悟れと言う方が無理なのだ。


そう反論したかったが、そうすれば火に油を注ぐことになるだけだから、蘭はむっつり口を閉じることにした。


そんな蘭の気持ちを知ってか知らずか、ヘラルドは「ともかく」と有無を言わせぬ口調で言った。


「もう一度広間の方にお戻り頂きます。よろしいですね」


蘭は頷くよりなかった。


東屋を出る。


これでまた現実へと戻ってしまうのだ。


次にあの人のヴァイオリンを聴けるのはいつだろう。


ヘラルドに見つかってしまった以上、この東屋に来られるかも分からなくなってしまった。


そんなことは考えたくないけれど。


来られなくなる可能性は高い。


(わたしの唯一の癒しだったのに……)


蘭は先を行くヘラルドの背中を知らず知らずのうちに睨み付けていた。





ヘラルドはしかし、広間には戻らなかった。


庭の小道を途中で広間とは反対の方に曲がったのだ。


蘭は首を傾げながらも、ヘラルドの後に付いていった。


あえて問いたださなかったのは、彼をこれ以上怒らせたくなかったからだ。


(今は素直に従ってよう)