久遠の絆

「でも」


「そのままでいて」


頑なに固辞する相手に多少の不満を感じながら、蘭は結局相手の顔を見ることが出来なかった。


けれど。


「ここには夜になると練習に来るんだ。もし良かったら、またおいで」


優しい声でそう言ってくれたことで、蘭の心にぽっと明かりが灯った。


それは暖かい春の日差しのような光だった。


その光に照らされていると、うじうじと悩んでいたことが馬鹿らしくなってきた。



「はい。必ず来ます。お邪魔でなければ」


「邪魔だなんて。俺も聞いてくれる人がいたほうがいいんだから」


この国に来て、蘭は初めて笑顔になった。


姿は見えないけれど、きっと優しい面立ちの人に違いない。


彼女の中でイメージだけが膨らんでいった。