久遠の絆

そして香水の匂いがほのかに香ってきた。


その匂いに頭が朦朧としそうだった。


「あ、あの、叫ばないから離してください」


口をふさがれたままやっとの思いでそう言うと、そっと手が外された。


蘭は相手の顔を見ようと振り返ろうとした。


「待って」


「え?」


「そのまま向こうを向いていて」


「ど、どうしてですか?」


「恥ずかしいから」


「恥ずかしい?」


「うん。……そのまま聞いてて?」


蘭は相手の言うことが理解できないでいるが、それを気にする様子もなく彼のほうは何かごそごそと動いているようだった。


すると夜のしじまに高尚な音が流れ出た。


(え、ヴァイオリン……)


この世界にも、そのような楽器があったのか。


そんなことよりも蘭は、その背中越しに流れ来る音色にうっとりした。


まるで月明かりのように、淡く儚い音色だった。


その人の心情をそのまま映しているのか。


そして。


(わたしの気持ちにぴったりの曲)


突然の来訪者によって奏でられたヴァイオリンの音に、蘭の心は激しく揺さぶられた。


(寂しいのに、力が湧いてくるみたいだ)


やがて余韻を残して曲が終わった。


「振り返ってもいいですか?」


「だめ」