久遠の絆

シド・フォーンという人が分からなくなってきた。


とことん冷酷で、他人の意思などまったく無視する独裁者だと思い込んでいたのに。


料理に携わった人のことに思いを馳せるなんて?


ただ単に支配者として君臨しているのではない。


そのために彼が為している深慮を垣間見たような気がして、蘭はシド・フォーンという人に、この時初めて興味を抱いたのだった。


「食べろ」


「は、はい」


言われ、思わず素直に肉を頬張っていた。


「お、いしい」


「冷める前に食べていれば、もっとうまい」


「そうですね……」


(なんか、話してみるとかなり印象と違う気が……)


蘭は途端に空腹を感じて、すごい勢いで目の前の料理を平らげ始めた。


すでに食事が終わっているはずのシドは、じっと座ったまま、時折ぶどう酒を口にしているようだ。


(もしかして、わたしが食べ終わるのを待ってくれてる?)


まさかそんなことはないだろうと思いながらも、まったく席を立つ気配のないシドに蘭は困惑していた。


それでも誰かがいてくれるということには安心感があった。


今はひとりになりたくなかったから。


ひとりになって、またあいつが現われたらと思うと、一気に食欲がなくなりそうだった。


最後のデザートまで綺麗に食べ終わると、蘭は手を合わせ「ごちそうさま」と言ってシドを見た。


「じゃ、おやすみ」


見計らったようにシドは立ち上がった。


「え、あの……」


「まだ何か食べたいのか?」