久遠の絆

マナーがなっていないと叱られるのではないかと首をすくめ、彼のほうを窺うと、
シドは何もなかったようにグラスに手を延ばしている。


するといつの間に来たのか、給仕係がさりげなく蘭の前に新しいフォークを置いて行った。


「す、すみません……」


消え入りそうな声で、やっとそれだけ言えた。


(わたし、場違い過ぎるんじゃ)


今さらながら、そんなことを思ってしまった。


こんなことになるなら自室で食事をしたほうが良かったとさえ思う。


(まさかシド・フォーンが来るなんて、思わなかったもん)


これがひとりであったなら、今頃はおなか一杯大満足になっていたはずだ。


彼は食事を共にする相手としては、あまりにもそぐわなかった。


(これがカイルなら……)


穏やかな気持ちでいられるのに。


そんなことをつい思ってしまって、蘭は自分の不毛な思考に内心溜息をついた。


「なぜ、食べない?」


「は?」


いきなりよく通る声で言われたので、蘭はそれが自分に向けられた言葉だと理解するのに時間が掛かってしまった。


「まったく手を付けていないが?」


「……あ、はい……すみません」


「謝らなくていい。ただ、何も食べないで、明日の朝まで持つのかと聞いているんだ」


「あ、ええと、そうですね」


「この料理とて、さまざまな人の手が加えられている。食さないと言うことは、それら
の人の働きを無駄にするということだ。
お前はそれでも、手を付けないで終わるのか?」


「……」


驚いた。