久遠の絆

どのくらいの時間そうしていただろう。


気付くと、傍らに誰かの気配があった。


はっとして顔を上げると、こちらを見つめていた視線とぶつかった。



「食べないのか?」


いる筈のない人の姿があった時、人はその人の顔をまじまじと見てしまうものだが、この時の蘭は正にそうだった。


そんな彼女を呆れたように見返しながら、ひそめる眉の下には漆黒の瞳。


その瞳はこのような時でさえ、鋭い光を帯びている。


射すくめられたように微動だに出来なかった蘭は、ようやくひと言を搾り出すように呟いた。


「シド・フォーン……」


“漆黒の総帥”として恐れられているその人は、にこりともしないで蘭を見下ろしていた。


まるで蛇に睨まれた蛙。


ただ見つめ合っているだけなのに、蘭は背筋に冷たい汗を滲ませていた。


それだけ威圧されていたのだ。


彼に会ったのはこれが2度目。


あの集落から連れ去られた時以来だった。


今まで放ったらかしだったのに、何故いきなり彼は現われたのだろう。


彼が次に何を言うのか、蘭は緊張しながら待っていた。


そして。


「たまには食事を共にしてもいいだろう」


そう言って、シド・フォーンは長いテーブルの反対側へと歩いて行った。


一瞬蘭は彼がなんと言ったのか分からなかった。


「へ?」

と言ったまま固まっていると、彼が椅子に腰掛けたのを見計らったように給仕係が入って来て、彼の前に食器を並べ始めた。


それでようやく彼の言ったことを理解した蘭は、内心(え~?)という気持ちだった。