久遠の絆

それも蘭が彼女に歩み寄れない原因のひとつだったが、仕方のないことだとは分かっている。


(わたしは捕虜で、彼女は監視するのが役目だもの)


そのような関係に、人間的な心の交わりを求める方が無理というものだろう。





廊下は明かりが乏しく薄暗かった。


蘭はこんな時間に部屋を出ることがなかったから、初めて歩く薄暗い廊下をびくびくしながら歩いて行った。


人の気配もない。


ここにはある程度の使用人がいるはずなのに、食堂に行くまでの間、結局誰にも会うことはなかった。


大きな扉を入ると、煌びやかなシャンデリアが目に飛び込んできた。


長いテーブルに等間隔に燭台が据えてあり、並べられた銀食器がその明かりをきらきらと反射させている。


時たまテレビで見る貴族の食卓風景が、そのままそこにあった。


「これからパーティでもあるの?」


思わず蘭はそう尋ねていた。


リリカは少し笑いを含んだ声で「いいえ」とだけ答え、一番手前の椅子を引いた。


「こちらにお掛け下さいませ。すぐに給仕係が参りますので」


そしてそのまま立ち去ろうとする。


(ほんとに必要なことしか言わないんだから)


少し憤然として、

「他には誰も来ないの?」

と去り行く背中に問うと、「ランさまおひとりです」と振り向きもせずに言って扉の向こうに消えてしまった。


そんなリリカと入れ替わるように、別の扉から盆を手にした数人の女性が入って来て、無言のままご馳走の載った食器を並べていく。


そして並べ終わると何も言わず出て行った。


ぽつりと残された蘭は。


手にしたフォークをぷすりと肉片に差したまま、それを口に運ぶこともせず、見た目も美しい料理をぼんやり眺めていた。