しかし……。
それも一瞬のことだった。
これから夜になるのだということを意識してしまうと、またあいつが現われるのではないかと不安になる。
ひとりで抱え込むには重過ぎることだというのに、誰かに相談にのって貰うということも出来ない類のことだった。
「そろそろお夕食の時間です。こちらにお持ち致しますね」
そう言って、リリカが部屋を出て行こうとした。
「待って」
「?」
思わず呼び止めてしまったのは一人になりたくなかったからだが、蘭はすでにそれを後悔していた。
よりによって、心を開くことのできない相手に縋ってしまうとは。
我ながら情けなくなってしまった。
あの家で暮らしていた時には一人でいることなど平気だったのに。
他人に頼ることなんて嫌だったのに。
(人の温かさを知ってしまったから?)
包み込むように見守ってくれた、薄緑色の瞳を思い出した。
(あの人のことを憎んでもいいはずなのにそうできないのは、非情になり切れない、あの人の優しさを知ってるからだわ)
だから自分は離れてしまってもなお、彼のことをこうして思い出してしまうのだ。
きっと、これからも……。
「ランさま?」
「あ、ううん、なんでもないの。あの……以前、食堂が別にあるって言ってたでしょう?」
「……はい……そう申し上げましたが、ランさまがお部屋で召し上がりたいと仰いましたので」
「うん、そう。だけど、今夜はここで食事するのは嫌だなと思って……」
「ああ、そうですね。分かりました。では、ご案内致しましょう」
リリカは事務的だった。
それも一瞬のことだった。
これから夜になるのだということを意識してしまうと、またあいつが現われるのではないかと不安になる。
ひとりで抱え込むには重過ぎることだというのに、誰かに相談にのって貰うということも出来ない類のことだった。
「そろそろお夕食の時間です。こちらにお持ち致しますね」
そう言って、リリカが部屋を出て行こうとした。
「待って」
「?」
思わず呼び止めてしまったのは一人になりたくなかったからだが、蘭はすでにそれを後悔していた。
よりによって、心を開くことのできない相手に縋ってしまうとは。
我ながら情けなくなってしまった。
あの家で暮らしていた時には一人でいることなど平気だったのに。
他人に頼ることなんて嫌だったのに。
(人の温かさを知ってしまったから?)
包み込むように見守ってくれた、薄緑色の瞳を思い出した。
(あの人のことを憎んでもいいはずなのにそうできないのは、非情になり切れない、あの人の優しさを知ってるからだわ)
だから自分は離れてしまってもなお、彼のことをこうして思い出してしまうのだ。
きっと、これからも……。
「ランさま?」
「あ、ううん、なんでもないの。あの……以前、食堂が別にあるって言ってたでしょう?」
「……はい……そう申し上げましたが、ランさまがお部屋で召し上がりたいと仰いましたので」
「うん、そう。だけど、今夜はここで食事するのは嫌だなと思って……」
「ああ、そうですね。分かりました。では、ご案内致しましょう」
リリカは事務的だった。


