久遠の絆

「侵入者がいるのでしたら、すぐにでも警備の者に伝えなければなりませんが」


また無言のまま首を振る蘭に、リリカは困惑した。


「何もなかったなんて通用しませんよ」


「分かってる。でも、なかったことにしてほしいの」


「ランさま……」


「あなたも忘れて。お願い」


そう言って、蘭は頭を下げた。


夜の帳が下りていくにつれ、徐々に室内も暗くなっていく。


それを蘭はありがたいと思っていた。


でなければ、今にも泣き出してしまいそうなこの顔をリリカに見られてしまっていただろう。


できることなら話しかけずにそっとしておいて欲しかった。


詮索なんてしないで欲しかった。


幽霊なのか、実体なのか。


わからないけれど、あいつは確実に自分の側にいる。


側にいて、またいつ襲ってくるか分からない。


どうしようもなく怖かった。


怖くて怖くて。


自分の背負う役目すら放り出して、逃げ出してしまいたかった。


(カイル。今ほど、あなたにいて欲しいと思ったことはないのに……)


けれど、ここはダンドラークではない。


心を開いて接することの出来る者がひとりとしていない場所だった。


「明かりを付けましょう」


今さらながら気付いたように、リリカが燭台の置かれた棚に近付いて行った。
ふっと室内が明るくなる。


ゆらゆらと揺れる蝋燭の明かりを見ていると、蘭のささくれ立った気持ちも落ち着いていくようだった。