久遠の絆

「ラン」


と聞こえたような気がした。


ニアスは少し離れた場所にいるマヤのほうを見た。


けれどここからでは彼女の表情すら見ることが出来ない。


(空耳か……)


その名前をここで聞くはずはない。


彼女は世界のために神の御許へ旅立ったのだから。


それが神殿の正式な発表だった。


ニアスは遺体を見ることすら許されなかったけれど。


カイルでさえそう言うのだから、そうなのだろうと思っている。


(けど今は……)


偽りばかりではないか。


もしかしたら、と思わないでもない。


わざわざ異世界から連れて来た少女を、そう易々と死なせてしまうだろうか。


(いったいどんな儀式だったんだ?)


改めて思う。


あれから昼夜を問わず続く神官たちの歌。


こちらは聞き飽きるほどだ。


これで世界は救われるっていうけれど、実のところ何一つ変わってはいない。


むしろ悪くなる一方だ。


同盟の新兵器によって失われた多くの命。


それらは救われるべきものではなったのか。


名前すら残らない下等兵たちであっても、家族が、愛するものがいたはずだ。


喪失の悲しみを背負わせて、それで本当に世界が救われるのだろうか。


そもそも世界を救うとは、どういうことなんだ?