久遠の絆

しかし彼の妹は。


マヤは、一人浮かない顔で甲板に立っていた。


兄のあるひと言に、彼女は引っかかりを覚えていたのだ。


それまでは兄の言葉をすべて信じていたのに。


あのひと言で、彼女の中に兄を疑う気持ちが生まれていた。


繰り返し、考えている。


答えが出ることはないというのに。


大好きな兄だから。


今までずっと、なんでも話てきた相手だからこそ、ショックは大きかった。


(兄さんは、確かにあの時……)


どうして隠すんだろう?


もう今までのように接することができないかもしれないとまで思う。


たった一人、すべてを預けられる人だった。


それなのに。


遠くに離れてしまった気分だ。


今回無理に同行したのも、もちろんナイルターシャのこともあるけれど、それよりも、何よりもマトと一緒にいたかったから。


(マトと離れることなんて、考えられないのに……)


彼の方はそうでもないのだろうか。


マヤに秘密を持っていても、何にも感じないのだろうか。


「あの時、“ラン”て、叫んだよね……」


心の中で思ったことが、我知らず口をついて出ていた。


はっとして口を押さえ、周りに誰もいないか確認する。


溜息をついて、そしてまた。


「ランて、あの子って、兄さんの何なの?」


その呟きは、川風にさらわれて一瞬で消えてしまった。


しかしマヤの中で生まれた嫉妬という感情は、いくら川を遡ろうと消えることはなかった。