久遠の絆

(ここに来てよかったのかな)


そんな考えが、ふとニアスの頭を過ぎった。


きっと軍人なんか見たくないはずだ。


咄嗟に彼は軍服を脱ぎ捨て、それを藪の中に放り込んだ。


白いシャツだけになれば、村人達と変わらない格好だから、一見しただけでは軍人だと
分からないはずだ。


そう思った。


村人達への配慮と同時に、余計な揉め事を起こしたくなかったのだ。


(マトさんの準備が出来次第、早々に立ち去ろう)


陰の方に座り、なるべく目立たないようにしていた。


じっと座っていると、じりじりと熱帯の太陽が照りつけてきた。


(帝国にもこんなところがあったんだな……)


ひとつの大きな大陸を領土とする帝国には、さまざまな自然環境が点在している。


けれど、普段気候の穏やかな首都にいると、つい厳しい環境もあるのだということを失念してしまいがちだった。


こんな辺境の地にも生きている人たちがいるのだ、ということを忘れてしまっている自分がいた。


少しでも陰の方に身を寄せていると、ぼそぼそとした話し声が聞こえてきた。


それに思わず耳を澄ませてしまった。




「あの女の子、どうなったかなあ」


「マトの知り合いみたいだったが、なんだって同盟軍に連れて行かれちまったんだか……」


「それどころか、ばばさままで、さ」


女の子が連れて行かれた?


もし捕虜を取られたのなら、すぐ軍に報告があってしかるべきだ。


だがそんな報告はなかったし、マトもひと言も言っていなかった。


(俺が下等兵だから、か?)


マトはまだかと、岩のほうに首を伸ばしてみたが、その姿はなかった。