久遠の絆

蘭は背中に視線を感じて振り向いた。


けれど当然そこには誰もいない。


黒光りする、金属の壁があるだけだった。


この部屋の壁だけでなく、この船のどこもかしこも黒い。


それが司令官の趣味なのか。


(服も黒かったものね)


ふとシド・フォーンのいでたちを思い出した。


軍服もマントもブーツも、腰に帯びた細身の剣の鞘でさえ黒かった。


(怖い人だったな……)


外見の印象とあいまって、彼のイメージは近寄りがたい独裁者といった感じだ。


(わたし、無事に帰ることが出来るのかな)


また窓の外に視線を移して考え込む。


雲の上に出ているため、太陽光が目に痛い。


それでも黒い壁を見ているよりはマシだった。


沈みがちな気分の時に黒い壁なんて見ていられない。


(あの後、マト達どうしたかな……)


勢いあまってナイルターシャの身代わりに捕らわれてしまったが、本当にこれで良かっ
たのかと、蘭は今頃になって思い始めていた。


ナイルターシャが真実をマトに託したのには、それなりの意味があるはずだった。


(わたしはもしかすると、それを踏みにじった?)


けれどあのまま大人しく、ナイルターシャが同盟軍に連れて行かれるのを見てはいられなかった。


(お年寄りを大切にしないのはいけないんだから)


だから自分の行動は間違っていなかったのだと、蘭は無理やり自分に納得させた。


(わたしは救い手だよ。たったひとりを救えないなんておかしいよ)


マトに言った言葉が甦る。


(そうだよ。ナイルターシャさまや村の人たちがあれ以上傷付かないで済んだのだから、これでいいんだ)