久遠の絆

指が切れそうなほどの冷たさに怯む様子も見せず、蘭はその跡をもう一方の手で洗うような仕草をした。


禊のようだった。


実際蘭はそのようなつもりであったのかもしれない。


この命溢れる空間で、己れの再生を願ったのだろうか。


冷え切った手を水から出した蘭は、一瞬迷った素振りを見せたが結局また包帯を巻き直したのだった。


(まだ、だめだわ……)


しかし清流の冷たさと共に、そこにこの場所の力も閉じ込めることができたような気がしていた。


(大丈夫。わたしは進める……)


もう一度滝を見上げた蘭は、体の向きを変えると、清流を下流に向かって歩き始めた。


この渓流を辿って下れば、いつかはどこか開けた場所に出ることができるだろう。


確信めいた気持ちで渓流沿いに下って行く。


その先に何があるかは、全く分からなかったけれど……。






今度の敵は渓流の岩場だった。


つるつる滑って、足元の覚束無いことといったらない。


コケなんか生えていたら尚更だった。


(打ち身いっぱいだろうなあ)


ハーフパンツを剥ぐって見る勇気もなく、ひたすら歩を進めた。


歩き通しで、時間の感覚がなくなってしまった。


今が昼なのか、もうすぐ夕方なのかもよく分からない。


その上、ますますジャングルの奥に入って行っているような気がしてきて不安が募る。


景色も代わり映えなく、樹木が生い茂っていた。


(ほんとにこのまま川に沿ってってもいいのかな?)


今さらながら思ってしまった。


しばらく歩いたがさすがに疲れて手ごろな岩に腰を下ろした。