久遠の絆

「息災でな」


向こうを向いたまま呟いた言葉は素っ気無い中にも、蘭を案じる響きがあった。


万感迫るものを感じながら蘭は急いで頭を下げ、逡巡する気持ちを振り切るように踵を返して玄関の戸を開けた。


その先には、さっきまではなかったものがあった。


大きな扉。


シェイルナータの平屋の家よりもまだひとまわりほど大きな扉だった。


呆然と立ちすくむ蘭に、追い討ちをかけるようなシェイルナータの声が飛んできた。


「その扉の向こうがどこに繋がっているかは私にも分からない。知っているのは“運
命”だけさ。
さあ開けるんだ。お前さんの未来と世界の行く末のために!」


その声に押されるように蘭は扉のノブに手を掛けた。


そして一瞬後ろを振り返る。


(シェイルナータさま……。カイル……)


再び会うことができるのか。


この先のことはまったく分からない。


(でもわたしは行くよ)


ここに帰って、もう一度あなたに会うために。


この世界を救い、成長した自分を見てもらうために。


(その時は少しあなたに近付いていれたら、いいな……)


扉の向こうに足を踏み出す。


けれどそこには地面も何もなく。


蘭は奈落に落ちるように、下へ下へと落ちて行った―――。