久遠の絆

蘭は立ち上がった。


そして家の中へと入って行った。


シェイルナータは編み物をしていた。


その後姿に、声を掛けてよいものか迷う。


しかしかの人は『読む人』だ。


「決めたかい?」

と編み棒を持つ手を止めることなく言った。


それに蘭は驚くことなく「はい」と頷く。


「ならさっさと回れ右して出てお行き」


「シェイルナータさま?」


「出たら分かるよ。もう、迷うんじゃないよ。お前さんの体が赴くまま、運命が流れるまま、前に進むんだ」


くんと良い匂いがした。


その途端乳白色の光に包まれた。


(また?!)


シェイルナータを見れば、その背中は平然として落ち着いている。


抗う間もなく、乳白色の光が渦を巻いて蘭の周りを回り始めたのだ。


「やっ」


その渦の勢いに耐え切れずドスンと尻餅をついて床に転がると、光は霧散して何事もなかったかのように部屋は静けさを取り戻した。


「せめてもの、はなむけだ」


訳がわからず困惑の表情のまま立ち上がろうと手を付いた時、自分の衣服が変わっていることに気付いた。


「なに……これ……」


今まで身に付けていた裾の長いドレスではなく、動きやすい軽装だった。


飾り気のないゆったりとした無地のチュニックに、ハーフパンツ、その上に巻きスカートのようなものを付けていて、足元はごわごわした皮のブーツ。


一見蘭の世界のカジュアルな格好のようだったが、素材はけっして高価だとは言えないようだった。