久遠の絆

「そんなに驚かなくてもいいじゃないか。失礼な子だねえ。
炊事や洗濯してる時には余計なことは考えないで、ひたすら手を動かすんだ。これも精神の修養だよ!ほら、しゃきしゃきするっ!」


「は、はいっ!!」


「考えなくてもいいことは考えない!」


「はいっ!!」


「そうそう、だいぶいい手つきになってきたじゃないか」


「はいっ!!」


今この時だけが平穏の時。


シェイルナータはそれを知っているからこそ、蘭に“日常”を感じることをさせてやりたかった。


不運な半生を送ってきたこの少女に、少しでも人の温かさを感じさせてやることができたなら。


(この子は前に進む勇気を持てるかもしれない)


袖をたくし上げているから、あの白い包帯が露わになっている。


それを隠そうとはしなくなったけれど、あえて触れようとはしない蘭。


シェイルナータは、あちらの世界で彼女に何があったか知っている。


彼女が身も心もぼろぼろになって、死にたい気持ちばかりが高まっていたことも知って
いる。


そんな折に、彼女を感じた。


悲鳴のような彼女の苦しみを感じた。


シェイルナータと蘭の意識が次元を超えて通じ合ったのだ。


その時通じ合った意識が蘭のものではなかったら、今ここにいるのは彼女ではなく、別の誰かだった。


『救い手は誰でもいい』と説明したのはそういうことだ。


(でもそれはあんたには言わないよ)


蘭は知る必要はない。


ただ自分が選ばれし救い手であることだけを信じて進めばいい。


『自分は特別な存在』


それを実感できた時、彼女は自分の抱える傷さえも乗り越えられる。


シェイルナータはそう思っていた。