久遠の絆

ナイルターシャの書いたという原本の、伝説の巫女姫のくだりには、そのようなことが書かれてあった。


蘭も読ませてもらったが、抽象的でよく分からなかった。


しかし、かつて同じような異世界から来たという救い手が“贄”として命を落とした、ということは理解できた。


(なのに、わたしは生きている?)


そこにどんな真実が隠されているのだろう。


書物から顔を上げた蘭は、恐る恐るナイルターシャの顔を見た。


この女性は、その美しい外見に騙されがちだが、人の反応を見て楽しむという悪い癖がどうもあるらしい。


ことさら他人の驚く様を見るのが好きなようだ。


(厄介な人……)


きっと光の球体の中で蘭が怯え切っていた時も、内心では大笑いしていたのに違いないのだ。


「ふ~ん、ちょっとの付き合いなのに、わたしの嗜好をよく分かってるじゃないか」


そしてもっと厄介なのが、彼女が人の心を読めるということだ。


(カイルがここに来て一段と無表情なのも、心を読まれまいとしているせいかもしれない)


などと、穿った見方までしてしまう。




実のところカイルが無表情なのは、ナイルターシャの作為的な態度に不満を覚えているだけなのだが。


それは蘭の知るところではない。


「あんたがどうして“贄”に選ばれたのか、まずはそこから話そうかね」


蘭は緊張から喉をこくりと鳴らした。


「結論から言えば、“贄”はあんたじゃなくても良かったんだ。」


「へ?」


肩透かしを食らったように、蘭はきょとんとした。