久遠の絆

ほんのりと淡い光に満たされた空間は清浄な空気に満ちていて、それを感じていると、ここに住まう人の真実の姿は決して残酷なものではなく、この空気の通りなのであろうと思わされる。


ナイルターシャは一足早く家屋の中に姿を消していた。


腕に蘭の重みを感じながら、ゆっくりと庭の小径を進んで行った。


やはり呼吸している。


間近で見ると、思いの外長いまつげが彼女の頬に影を作り、口元は笑みを浮かべているように見える。


その安らかとも言える表情を眺めていると、カイルは自責の念に駆られてくるのだった。


(このなんの罪もない少女の命を、私はなんといとも簡単に奪おうとしていたことか……)


国を、世界を救いたいという一念のために異世界から連れて来た少女を、半ば騙すような形で“贄”に仕立て上げたのだ。


ナイルターシャの示唆があったとは言え、今さらながら自分の傲慢さに身震いした。


元帥という立場がなければ、もっと彼女に親身になれてやっただろう。


『死にたい』と口にする彼女の声に、もっと耳を傾けてやれただろう。



だが。



カイルはこの国を支え守る立場にあり、それを捨てる気持ちも全くなかった。


だから前に進むしかない。


この小さな少女を犠牲にすることを厭う余裕さえ、自分達にはもはやないのだから。











ナイルターシャの家に入ると、すでにテーブルにお茶の用意がされていた。


存外こまめな人だ、ナイルターシャという女性は。


「その子はそちらの長椅子に寝かせておあげ」


そっと横たえると、かすかに身じろいだ。


彼女がたしかに生きているのだという確信を、また深める。