久遠の絆

ナイルターシャは件の書物のある貢で手を止めた。


「ここに、かつての洗礼の事例が記してある」


「かつての洗礼?」


「そうだよ」


「……ナイルターシャさま」


「なんだい?」


「私がその本を読んだ時には、そのようなこと書いてなかったと記憶しておりますが……」


すると彼女はふふんと鼻で笑った。


「そりゃそうさ。これは原本だからね。都合の悪いことは、一般書にされる際削除してあるに決まってるだろう」


さすがは伝説の巫女姫。


ぬかりない。


「ナイルターシャさま……」


また大司祭が咳払いをひとつ。


「セクンはうるさいねえ。せっかく若い男が来てくれてるんだ。雑談したっていいじゃないか」


拗ねるナイルターシャに、さすがの大司祭も困惑しているようだ。


「まあ、さすがに時間も遅いことだしね……。それで、だ、元帥」


「はい」


「この本貸してあげるから、あとは自分で勉強しとくんだね」


そう言って、花が咲くように笑った。













「ナイルターシャさまとは、ああいう方なのだ」


巫女姫の住まう空間を出、神殿の廊下へと戻りながら、いつもは必要なこと以外は話そ
うとしないセクン大司祭が愚痴を言うように呟いた。