久遠の絆

そして大司祭との会話は打ち切りとばかりにカイルに顔を向けた彼女は、その瞳に強い光を浮かべ、


「よくお聞き。この国を救いたいなら、ひとつのことばかりに気をとられてちゃいけないよ。
もっと広く大きく視野を広げるんだ。そうでないと、何もかもを失うことになる。
私はそれができず滅んだ者を何人も見てきたんだ」


あんたはそんな愚鈍な人間ではないだろう?


そう言ってカイルを試すように見ていた。


(ああ、やはりこの人は……)


告げられたわけではないのに、カイルは確信していた。



伝説の巫女姫。



かつてこの世界がいくつもの国に分かれていた時、ダンドラークの皇帝に示唆を与え、統一へと導いたとされる不思議の力を持った女性。


しかしそのやり方は容赦なく苛烈を極めたため、血で血を洗う戦が繰り広げられ、その結果多くの犠牲が出たのだという。


そんな激しい気性の巫女姫ではあったけれど、世界に平和をもたらしたことは高く評価され、多くの崇敬を集めることになった。


それはたいていの歴史の本には書かれていて、学校の授業でも普通に教えられることだった。


けれど本人が生きているなんて、そんなこと一般では知られていない。


神殿の者だけが今まで秘密裏に彼女を庇護してきたのだ。


よくぞここまで隠し通してきたものだと思う。


(陛下がお聞き及びになれば、熱を出してしまわれるかもしれないな)


皇帝は今回の蘭の洗礼にはいっさい関知しない、元帥に一任すると公言しているため、すべてはカイルの胸の内に留められることになった。


(それでいい)


皇帝は国の行く末だけ憂いていればいいのだ。


(雑事はすべて私が請け負う)


それが一貫した彼の姿勢だった。