治まるまでじっと耐える。そうして痛みが治まる頃には冷や汗をかいていた。ふう、と息を吐くと身体の緊張が解れた。

朝から何度かあるこの発作が私の終わりを告げている。分かっていても恐怖が後ろから追いかけてくるようで居ても立っても居られなくなった。


 立ち上がり、手も拭かずに来た道を戻る。服で適当に拭いてしまおうかとも思ったけど、彼がくれたワンピースを汚したくなかった。手を広げ、ささやかな風に吹かれると、すぐに手の水気はなくなった。


 皆が寝る深夜の町は静かだ。星明りだけを頼りに歩く道は心が穏やかになる。でも、もしかしたら彼が起きているかもしれない。何も言わずに出てきてしまったから、私がいないことを知ったら心配するだろう。

頼る人のいない私を助けてくれた優しい人を心配させるわけにはいかない。帰路は穏やかに過ごすこともなく、早足で帰った。


 家に帰ると、明かりはついていなかった。彼は気付かずに眠っているのだろう。すやすやと眠る彼はどんな夢を見ているのだろう。幸せな夢を見ているといいな。

その中に少しだけでも私がいたりしたらいいな。私は彼と過ごす朝食の時間が一番幸せ。彼にとっての幸せはなんだろう。彼は妹のことをとても大事にしているから彼女との夢かな。