* * *
入学式を終え、二か月が経った。
琥珀は現在、ラブレターの送り主に指定された場所に足を運んでいた。
どうやら早く着いてしまったらしく、相手の姿は見えない。
この場所に来て、ようやく緊張の波が襲ってきた。
そうこうしているうちに、ようやくラブレターの送り主らしき人物が現れた。
橘くんは私の存在を確認すると、目を見開き、口を開き、驚きを露にした。
「あ、橘真広くん?」
私が声をかけると、橘くんはハッと我に返り、早足で階段を駆け上がってきた。
「高橋さん! まさか本当に来てくれるとは思わなくて! すみません、待たせましたよね!」
黒い縁の眼鏡をかけ、長く邪魔そうな前髪から大きな瞳を覗かせながら、橘くんは私の横に直立した。
背は悠希よりも高いが細い。
「ううん。今来たからそんなに待ってないよ。あ、てゆうか初めまして」
「は、初めまして!」
簡略的に挨拶した私に対し、橘くんは深々と頭を下げた。
緊張しているのが嫌でも伝わってくる。