「七海来てないけど、聞いちゃっていいかな。希望ちゃん、バレンタインどうだった?」


 私の質問にゆっくり顔を上げた希望ちゃんの表情を見て、私はホッと胸を撫で下ろす。

 彼女は、とても嬉しそうに笑っていた。


「えへへ。うん、成功。廈織くん、ビックリしてたけど、ちゃんと受け取ってくれたよ、チョコレート」


 ほんの少し前まで悲しい顔しかしていなかった希望ちゃんが、満面の笑みで恋敵だった私と時間を共にしている。

 それは言ってしまえば大きな違和感があったけれど、目の前の彼女は、もう、昔の彼女ではないし、私の恋敵でもない。

 彼女は失恋を乗り越え、新しい恋を見つけた。

 自分の過ちを告白し、謝罪した。

 今の私たちは、互いに恋を語り合う、仲の良い友達。


「告白はしたの?」


「実は前からそれらしい発言してたから、告白する前から彼は私が好きって知ってたんだよね。知られてると、余計恥ずかしいって初めて知った」


「私と同じ!」


「え?」


「私もいつの間にか悠ちゃんに気持ちバレちゃってたみたいでさあ……今更言うの? って感じだったな」


 昨日の出来事を思い出しながら、私は苦笑する。

 私は昨日、希望ちゃんから電話を貰う少し前に、ついに悠ちゃんへ告白した。

 その数か月前に告白めいたことをしていたこともあって、恥ずかしさ、というよりは、二度目となる告白に変な緊張感を抱いていた。


「へえ! で、どうなったの?」


「それがね……」


 そして私は、当日のことを思い出し、自分の頭で再確認しながら、希望ちゃんに向けて語り始めた。