変化を恐れる臆病者。主役になれない役者。

 それが、私が橘真広に下した結論だった。

 彼は変わりたいと願いながら、変わることを恐れている。

 新しい、知らない明日が来ることを恐れている。

 変化を望むことを拒むなんて、私には到底理解しがたい考えだ。


「ねえ、橘」


「はい?」


「橘は……変わってみたいとは思わない? 全然知らない自分に会ってみたいって……昨日とは違う明日を生きてみたいって思わない?」


「それは……どういう意味ですか?」


 あからさまに警戒する橘に、私は両手を空けて笑顔を見せる。


「だーかーらー、イメチェンしてみない? って言ってんの! こーんなもっさい髪型も眼鏡も変えてさ、かっこよく変身しようぜってこと! 女の子の気を引きたいなら、まずは外見からでしょ。琥珀にカッコいいって言ってもらえるように、私がプロデュースしてあげよう! 七海のことは師匠と呼ぶように!」


「ええ! そんないきなり! でも、まあ……こうしていても何にもなりませんしね。琥珀さんに褒めてもらえるのなら、やってみてもいいかもしれないですね。宜しくお願いします、師匠」


「うむ、任せなさい!」


 偽りだらけの私だから、人に献身することでこうして自分を保っていられる。
 誰かの為になる自分。

 人からの評価を求める自分。

 人の心を掌握しようと思いながら、私は結局その誰かに頼って生きていくことしかできないのだな、と気が付いた。

 一人では生きていけない寂しがり。

 人を求める癖に、人を愛する方法を知らない、恋を知らない偽善者。

 それが私。

 柳七海。