独り言のように呟き、私は朝日に目を細めながら私服に袖を通し、香ばしい珈琲の匂いに誘われるがままリビングに顔を出した。
「おはよう、お母さん」
「あらおはよう。今日は早いのね? いつもなら、日曜日は起こしに行くまで寝てるのに」
「たまたま目が覚めただけ。ていうかお腹すいた」
「はいはい、丁度いいわ。朝ごはんを食べたら、一緒にお墓参りに行きましょう」
「うーん」
そこで、私は遅めの朝食が並べられる最中のダイニングチェアに腰を下ろし、唸り声を上げる。
「なに、用事でもあるの?」
「いや、特にないけど……」
「じゃあいいじゃない。お墓参りのついでにお母さんと久しぶりにデートしましょうよ。どこかでご飯を食べて、お買いものとか」
お母さんのプランに私は未だ渋い表情をしながら唸っている。
心の中で、行きたくない、という気持ちがあるのだ。
今朝、あんな夢を見てしまったから、というのが理由。
なんだか今年の命日は、お父さんに歓迎されていないような気がしたから。
それだけなんだけど。
「……分かった、行く。でも、お昼ご飯は外食でもいいけど、その後は私、用事があるから買い物はまた今度にしようよ」
「さっき特に用事はないって言ってたじゃない」
「今思い出したのー。お昼はあれ食べたい、●●●リアのイタリアン、チーズ二倍増しのピザ!」
全国チェーンの店名を連呼しながら私はお母さんが焼いてくれたパンにかじりついた。
今朝の夢を理由にお墓参りを断るわけにはいかない。
今でこそ気丈にふるまっているけれど、お母さんは私がいないところで泣いている。いつもいつも、仏壇に手を合わせながら。
――――私を怨んでいるのは、お母さんも同じなのかもしれない。
そんなことを考えてしまう自分自身に嫌気がさしながら、私はお母さんと供にお父さんのお墓参りに出かけたのだった。